2005蒼白絵板合戦@テーマ「夏」自由ツール部門(写真屋)

「真夏の海中夢」

海の中を覗いたらそこには「夏」が来ていた。
僕はいつものように海に来ていつものように海の中を覗いたのだ。
何の期待もしていなかった僕の目には、いつもの海の光景が広がっているはずだったのだ。
どういうことだろう。海中に向日葵が咲き、花びらが舞っているではないか。
その周りを、なんともいえない、猫のような生き物が花びらで遊んでいる。
加えて、背中には何故か珊瑚が生えている。どういう生き物なのだあれは。
僕の視線に気付いたのか、生き物が僕を振り返った。僕は驚いたが視線を外すことできなかった。
そして、笑んでその生き物は確かに言ったのだ。

「抜いては駄目だよ、やっと咲いたんだから」

背に光る珊瑚がまるで羽根のようであった。
そこまで聞いて僕は息が続かなくなり、顔を上げた。
再び覗いてはみたが、そこにはただ海藻がたゆたうばかりで、
向日葵も生き物も消えていた。